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セイコーエプソン
メカトロニクス職種への挑戦
2009年10月に茨城県にて開催された第47回技能五輪全国大会。
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダエンジニアリング…。日本を代表する錚々たる企業からの出場が多くみられ、おそらく上司であろうスーツ姿の人々が真剣な眼差しで選手たちの作業を見守っている。
そんなメカトロニクス職種で一心不乱に課題と立ち向かっていたのがセイコーエプソンものづくり塾の栗生選手と根橋選手だった。
電子技術、機械技術、情報技術をミックスしたいわば近代種目であるメカトロニクス職種。実際の生産現場と同じようなFA(生産自動化)モデルを使って競技し、装置の設計、組立、調整能力や、プログラミング、ネットワーク運転、トラブルシューティングなどの能力を競い合う。
2009年全国大会の結果だけを言えば、栗生選手と根橋選手は最終課題までクリアできなかった。そういった参加選手はいくつか見受けられた。それほど難度の高い競技なのだ。
けれど、競技終了後に2人へインタビューをしたときに感じた、「何かをつかんだ」という手ごたえにも似た彼らの雰囲気が不思議で、ずうっと頭に残っていた。
栗生・根橋の両選手は2009年の技能五輪全国大会で何をつかんだのだろう?
根橋俊和選手。メカトロニクス部門ではプログラミングを担当。訓練場の上には個人目標である「金メダル獲得」が大きな字で掲げられている
セイコーエプソンものづくり塾に取材で訪ねたのが4月の終わり。
栗生選手と根橋選手は大会と同じ真剣な顔で訓練をしていた。聞けば7月に社内選考があり、まずはそれに向けて、自主的に自分で決めた課題を一つずつ取り組んでいるらしい。
記者:お久しぶりです。2009年の技能五輪全国大会で取材させてもらったときより、引き締まったような雰囲気が感じられますね。
根橋:いや、そんなこともないんですけど…。でも、今回も出場のチャンスをいただけたので、もうやるしかないかなって感じです。
記者:二度目の出場を目指すことで何か昨年との違いはありますか?
栗生:去年は競技会場にいるだけで手が震えるくらい緊張してしまっていたので、今年こそはっていう気持ちはあります。
記者:去年の技能五輪全国大会では惜しくも課題途中でタイムアウトになってしまったわけですけど、その原因はなんだったのでしょう?
栗生:メカトロニクス職種は大きく分けて組立とプログラミングに分けることができて、僕は組立担当だったんです。根橋君がプログラミングで。それで、僕が担当する電気配線がうまく繋がっていなくて、その原因を追究していたら時間が足りなくなったのが大きかったです。
根橋:僕はプログラミングしながら、全体の工程管理もするんですけど、やっぱり緊張もあってか栗生君のフォローやサポートをきちんとできていなかったのも原因でした。
記者:いつもの実力を発揮できなかったのが大きかった?
栗生:そうですね。なんでこんなミスをしたんだろうって自分でも不思議なくらいでした。でももちろん、他の選手のレベルの高さを実感したので、実力をもっとつけなくてはと痛感しました。
栗生達矢選手。メカトロニクス部門では組立を担当。栗生選手も「金メダル獲得」を大く掲げていた
技能五輪全国大会メカトロニクス職種は大会本番まで仕様とプログラムが提示されない。それはつまり、いかに確かな知識とその引き出しを持っているかが試される場でもある。
技術革新のスピードが速い分野を反映するかのように、機械、電子、情報工学の幅広い知識、応用力、確かな技術力が必要であり、現代の製造業に必須である項目が詰まっている部門である。だからこそ、錚々たる企業が若者技術者の育成の場として注目し、力を入れているのだ。
記者:2009年の技能五輪全国大会はセイコーエプソンがメカトロニクス部門に初出場するという年でもありました。お二人は初出場選手としてそのパイオニア(開拓者)でもありましたね。パイオニアとしての苦労はいかがですか?
根橋:パイオニアであるという意識はあまりないけれど、「メカトロニクス職種とは何ぞや」といった基本的なことから考えて、調べて、分からなかったら指導員の方に質問して。そういった一から考えて調べていくというのは他部門とすこし違うところかもしれません。
栗生:いざ本番になったら慎重になりすぎて時間管理がうまくできなかったり、出場してみて初めて分かったことが本当に多かったです。ただ、今度はそれを僕たちが後輩に伝えていなくちゃいけないし、それを解決していかなくてはと思います。
二人はその日ごとの訓練テーマを自主的に決め、技能五輪全国大会の課題に合わせた通し訓練を毎日行う。一日の訓練終了後にはその日を振り返って、自分の掲げたテーマに対してどこまで行けたのか、その反省点はどこかを確認し合い、不明点について指導員から指導を仰ぎ、また翌日のテーマを模索していく。
技能五輪全国大会のメダル獲得という個人的目標に、彼らは一歩一歩、確かめるように歩んでいく。それはきっと、昨年に出場したからこそ得た「やるべきことに近道はない」という実感からなのだろう。
去年は栗生・根橋両選手の二名だったものづくり塾のメカトロニクス職種選手は今年から四名になった。二人は指導員からの指導を受けつつ、新しい二人を導きつつ訓練を重ねている。取材してみて思うのはそんな彼らから「やらされている」といった雰囲気が少しも感じられないことだ。これはセイコーエプソンものづくり塾の共通した雰囲気なのだが、彼らの自主性の高さには目をみはるものがある。
根橋:一日一日が本番なので、とにかく考えて、疑問があったら調べての繰り返しです。指導員の方との日常的なコミュニケーションはもちろんのこと、月に一度はメカトロニクスの選手全員で情報共有やチーム力向上を目的としたブレインストーミングを実施しています。
栗生:メカトロニクス職種は生産設備に関わる全般的な知識が必要になる競技なのですが、その知識・技能を吸収し、以前事業部の保全業務に携っていて、現在自分達の指導にあたってくれている佐藤さんのような人材になりたいです。
今年の技能五輪全国大会の目標は?と尋ねると「出場した選手全員がメダルを獲ること。それしかないです」と明確に答えてくれた。
取材後、訓練場に戻った二人は新しい仲間二人とともにすぐさま練習を再開した。さっきまでの取材時とはうってかわって、集中した眼差しで今日の課題について討議を始めた四人からは、「とにかく今はこれが最重要項目なんだ」というストレートな気持ちが伝わってくるようだった。
去年の技能五輪全国大会で二人が得た種は、今ここで確かに芽を出そうとしているのだ。
技能五輪全国大会のメカトロニクス職種とは、電子技術、機械技術、情報技術をミックスしたいわば近代種目であり、課題は実際の生産現場と同じようなFA(生産自動化)モデルを使って競技し、装置の設計、組立、調整能力や、プログラミング、ネットワーク運転、トラブルシューティングなどの能力を競い合う部門です。
競技のポイントは、新規ステーション(Unknown Station)を完成させたら最初に標準課題をできるだけ短時間でこなすこと、次にできるだけ多くの応用課題をこなすこと。
競技装置には選手がはじめて見るUnknown StationやUnknown Partsが含まれます。これらを理解するためには、機械的なセンスが必要です。また、トラブルシューティングでは、生産設備の保守管理能力が問われます。
生産現場を想定し、知と技とチームワークを競う部門として注目されています。
| 社名 | セイコーエプソン株式会社 |
|---|---|
| 代表 | 碓井 稔 |
| 設立 | 1942年 |
| 事業内容 | 情報関連機器(プリンター、スキャナー等コンピューター周辺機器及びパソコン、液晶プロジェクター等映像機器)、電子デバイス(ディスプレイ、半導体、水晶デバイス)、精密機器(ウオッチ、眼鏡レンズ、FA)、その他の開発・製造・販売・サービス |
| 従業員 | 連結77936人 単体13502人(2010 年3月31日) |
| 資本金 | 532億400万円 |
| 住所 | 〒392-8502 長野県諏訪市大和3-3-5 |
| TEL | 0266-52-3131 |
| FAX | 0266-53-4844 |
| URL | http://www.epson.jp/ |