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自分×技能

フジゲン株式会社
瀬戸 裕(入社12年)

カスタムギターは一貫してひとりが責任をもってボディ、ネック、時にはフレット面まで塗装を行う。

演奏し易い形状、音の抜けの良さ、音の立ち上がりなど、その安定した性能の高さで、多くのプロギタリストに愛されつづけるフジゲンギター。

フジゲンは、有名ブランドギターの製造・供給、自社ブランドのギターの開発・製造・販売を行ない、日本のトップギターファクトリーとして創業から半世紀、長年にわたって世界のトップを走り続けている。

今回、お話を伺ったのは、このフジゲンでカスタムギターの塗装を担当する瀬戸さん。カスタムギターは量産品とは異なり、ギタリストが自分の一本にと思いを込めてオーダーする製品。より高い完成度が求められる。 特に塗装はギターの見た目や印象はもちろんのこと、塗り方によっては音質をも左右する非常にデリケートな工程だ。 量産品の工程では、通常、塗装は細かく工程がわかれて行われるが、カスタムギターは一貫してひとりが責任をもってボディ、ネック、時にはフレット面まで塗装を行う。ひとりで行うことで、より高いレベルで製品のクオリティを保持することが目的だ。

製品の顔とも呼べるべきギターの塗装に、30歳という若さで抜擢され、その後2年間にわたりカスタムギターの塗装を担当してきた瀬戸さんに、仕事のやりがいや楽しさを聞いた。


さまざまなセクションでの経験が塗装づくりに役立っている。

木工の現場

組み立て、量産品の塗装、カスタムショップスタッフ、ギター修理、などフジゲン内部の業務でもとりわけ多くの業務に携わってきた瀬戸さん。この経験がカスタムギターの塗装に大きく役立っているという。

特に、フジゲンギターは、木材の乾燥工程の複雑さ(※1)、サークルフレッティングシステムの導入(※2)、素材の木取り(※3)など、様々なフジゲン独自の工程がある。これらの工程により、ギターの品質が高く保たれているわけだが、フジゲンギターの製造工程をよりよく知ることが塗装業務に活かされているのだろう。

工場のラインで塗装を行っていたときは、作業内容が分断され、工程ごとに仕事を任される。こういった場合は、ひとつひとつの段階をきっちり行うという視点を大切に、ギターの塗装を行っていたという。しかし、接客を通し、お客さまとのコミュニケーションから意見を聞いたり、ラインの組み立てや塗装業務を経たりすることで、現在は「お客さまの目が何を見ているか」ということを意識しながら、組み立て全体を把握し、一本一本を手がけることが可能になったという。


※1 木材の乾燥工程・・・天然乾燥→人工乾燥→シーズニングと乾燥工程で3段階おくことにより木材を適切な含水率に調整する工程。» 詳細

※2 サークルフレッティングシステム・・・ナット~最終フレットまでのスケール値(弦長)を全ての弦で同じにすることで、より正確なピッチ感が得られる。各弦と各フレットが直角に交差するため、単音においてもコードにおいても音の抜けがよく、音の立ち上がりも良くクリアーなサウンドが得られる。» 詳細

※3 素材の木取り・・・ネック用に一本の丸太からわずか10%程度しかとれない貴重な柾目材(ネック用)をセレクトボディー材も木目が美しい比較的軽量の良質素材をセレクトしています。 » 詳細


もともと楽器が好きだった。

音楽から入ってバンドをはじめ、本来ならば、プロミュージシャンを目指すところが、なぜか楽器自体に興味を持ってしまった瀬戸さん。学生時代の頃、ネックが反っていたら調整したり、修理しているうちに、楽器に興味がわき、もっと良い音がでないだろうか、もっと楽器のことが知りたいと、自然に興味が移っていったという。その後、さらに深くギターについて知りたいという気持ちから、専門学校でギタークラフトを学ぶ。その後、フジゲンに入社することになる。


見た瞬間に気に入ってもらえるかが大切。インスピレーションの豊かさが塗装には必要

丁寧に吹付けていく。

現在は塗装のパートのため、音に関しては組立以降の人に任せている。大切なのは、見た瞬間に気に入ってもらえるか手にとってもらえるかということであり、この部分を担う大切なパートであると理解しているとのこと。

また、カスタムギターゆえに、お客さまから指定される色の再現という仕事の他に、ギター一本すべての塗装を任せられる場合も多いという。
その際は、インスピレーションの豊かさが塗装に必要となる。瀬戸さんは、インスピレーションを育てるために、工場内または楽器の世界ににとどまらず、いろいろな世界を見る努力をかかさない。
特に塗装は自動車のカスタマイズ塗装に影響を受けている部分が多く、自動車業界の塗装には大きなインスピレーションを受けることがあるという。


工房職人になってはいけない。

「品質だけを追求する頑固な工房職人になってはいけない。」という瀬戸さん。
名古屋や東京で働いていた時と比べ、楽器が使われる現場でこそ肌に伝わる情報や感覚から遠ざかってしまった今、自分の作っているギターの消費地がここではない、つまり工房ではなく別の世界で使われているということを意識することや、時代と歩みを共にして、同時代的な感覚を研ぎ澄まして仕事に望むことが重要だという。
つまり、品質だけにこだわるのではなく、こうあるべき姿を追い求めることが大切であるという考え方だ。


人は見た目じゃない。自分が化ける可能性を信じて

「楽器業界では、見た目や雰囲気がすこし変わっている人が多い、でもそんな人が化けることは多い」という。自分が化ける可能性を信じて、まずはやってみることがいいんじゃないかという瀬戸さん。 ラインで動いているような場合はがんじがらめで自由がないように思われているが、フジゲンでは改善提案がそのまま生かされることも多いという。
自分の声が上に届き、改善に生かされたり、時には、製品仕様ががらっと変わることもあり、こんなとき大きなやりがいを感じると話してくれた。


社名 フジゲン株式会社
代表 上條 欽用
設立 1960年5月
事業内容 M・I事業部:エレキギター製造(OEM、自社ブランド)、海外輸入品ギター検品・修理、オーダーメイドギター製造/販売
C・A事業部:高級乗用車用内装ウッドパネル製造、高級ディスクオルゴール製造/販売、和太鼓製造/販売 、ウクレレ・大正琴製造/販売
従業員 263名(男:193名、女:70名)
資本金 9,560万円
住所 〒399-0014 長野県松本市平田東3-3-1
TEL 0263-58-2448
FAX 0263-86-5694
URL http://www.fujigen.co.jp/