ホーム > WAZACANインタビュー > スペシャル > 高専生の夏 Honda エコ マイレッジ チャレンジへ挑戦!
1リットルのガソリンで何km走ることができるかを競う競技会「Honda エコ マイレッジ チャレンジ」は、技術と創意工夫を凝らしてマシンの燃費の限界にチャレンジする知的なモータースポーツ。通称「エコラン」の名で親しまれており、1981年に第1回大会(※)が開催されて以来、30年以上も続く歴史ある大会だ。毎年全国の中学校や高等学校、高専、専門学校、大学といった学生や、社会人のチームが、会場となる栃木県ツインリンクもてぎに多数集結し、「限りある地球資源をいかに活用するか」という点でも関心や注目を集めてエントリー数は年々増加。日本国内にとどまらず、タイや中国からの海外チームも参加するなど、グローバル化も見られる。第31回となる今年は10月9日(日)に開催。大会まで1カ月を切り、最終調整に余念がない常連参加チームのひとつ、長野高専エコノパワー部を訪ねた。
※旧大会名は本田宗一郎杯Hondaエコノパワー燃費競技全国大会。2010年に改称
1996年の創部以来、顧問を務める機械工学科の岡田学先生は、「エコランは自分たちで設計し、製作して演習するという一連のものづくりの流れを経ることで確実に理解されており、その上でより良いものを作ろうという向上心を感じる」と話す。
1996年に同好会の形でスタートした長野高専のエコノパワー部は、今年で部活創立16年目を迎える。当時は5人しかいなかった部員も、現在は36人を数えるほど大きくなり、昨年、一昨年の「Honda エコ マイレッジ チャレンジ 鈴鹿大会」では、見事優勝を飾り、今年6月の同大会では3位入賞を果たした。創部当時から顧問を務める機械工学科の岡田学先生と共に、作業と調整に励む彼らの様子を見て回った。
そもそもこの大会は、「Honda4ストロークのエンジンを使い1リットルのガソリンで何km走行できるか、無限の可能性に挑戦し、独創的なアイデアと技術を競う研鑚の場」と謳われており、ホンダスーパーカブなどに使われている50ccの4ストロークエンジンをベースにしたオリジナルの車体で競われる。ベースのエンジンはすでにそれなりの完成度を持っているため、いかに車体の空気抵抗を少なくし、軽量化することで転がり抵抗を少なくするかが重要な鍵となり、また走行方法も大会結果を左右する大きな決め手のひとつとなる。
ふいに岡田先生に、「1リットルでだいたいどのくらい走ると思いますか」と尋ねられた。スーパーカブの燃費(約70km/リットル)を考慮して、「120kmほどでしょうか」と答えると、「いえ。大会での入賞ラインは1000km/リットルと言われていて、優勝クラスですと3000km/リットルを超すチームもあるんですよ」との返答。なんと、3000km/リットル!! 予想を大幅に上回る驚異的な数字だ。昨年の鈴鹿大会では優勝した長野高専チームも、全国大会での最高記録は960km/リットル(8位)だそうで、今年は1000km/リットルを超そうというのが学生たちの目標だ。
炎天下の中、黙々とやすりがけに励む。小さい頃から機械が好きで、中学1年の時にエコランを始めた飯森高史さん、丸山巧さん(1年)。「将来は自動車関連の仕事に就きたい」と話す。
今年は全部で4台が出場予定だそうで、2台はかつて制作した車体に改良を加えたもの、もう2台が新車だという。作業現場を覗くと、学生たちは車体の外板部であるカウリングを制作する人、エンジンの始動を確かめる人、フレームを組み立てる人など、各々がそれぞれの作業に集中に、コツコツと手を動かしている。
「長野県は篠ノ井西中学校を中心に、中学生クラスのエコランの参加が活発で、今年は中学からエコランを続けて来た学生が3人も入ったんです」と先生が話す1年生のうちの一人である飯森高史さんも、炎天下のなか、黙々とカウリング成形用の雌型を作っていた。
この雌型にガラス繊維を敷き、それに樹脂を塗って固めるとFRP(繊維強化プラスチック)のカウリングが完成する。カウリングが滑らかなことが車体の空気抵抗に大きく関わるため、雌型を平に仕上げるべく、凹部分をパテを塗ったり、凸部分をヤスリで磨いたりと、その作業には余念がない。
同じく隣で別車体のカウリングの調整を行っていた1年生の丸山巧さんもまた、中学生の頃からエコランを続ける一人。念願かなって、長野高専のエコラン部に入部したそうだ。「まだ機械をちゃんと使いこなせないので、1年生の作業はカウリングの調整が中心」なのだそうだが、「将来はメーカーに就職して、燃費の良いクルマを作りたい」と話す様子からは静かながら厳とした情熱が感じられる。彼らのように中学からエコランを始めた学生の入部は、上級生にとって大きな刺激になっているそうだ。
エンジンを搭載した車体の調子を確かめる部員たち。色々と調整を加えていく。こうして将来のエコカー業界を支えるエンジニアへと育っていくのだろう。
作業所内では、部長で4年生の上浦和明さんが2人乗り用新車のフレームの組み立て作業を行っていた。フレームの形にこだわり、振動が少なくなるよう工夫したそうで、溶接を得意とする上浦さんだけあって、アルミフレームの溶接部分が美しい。
新車は毎年1台は製造しており、他のチームを参考にしながら三次元CADで設計し、スチロールを積層して模型である雄型(原型)を製作。それを元に雌型を取り、製造していくという工程を踏む。新車の製造には早くても3カ月、長いと半年かかり、設計だけでも1カ月を要するそうだ。さらに加工、組み立てには長い時間を要するが「新しいマシンは記録を残してくれるんじゃないかと期待が高まる」と話してくれた。
「高専では、普通の学校に通っていたらできない貴重な体験が得られ、部活として公に好きなクルマの製造ができるので、本当に楽しい。」と話す姿が生き生きと本当に楽しそうだ。4年生の今年が最後のチャレンジだそうで、10月の全国大会でもクラス内(大学、短大、高専、専門学校クラス)での優勝と、燃費1000km/リットルを目指している。
入念なチェックをして、いよいよ試走。かなり低い姿勢で、まるで寝ながら運転するような体勢のため、視界は相当狭いそうだ。今回の試走は初回のため、上側のアッパー(Upper)カウルを付けずに走行していた。
翌朝、一人乗り用の試走にも同行させてもらった。大会では、ツインリンクもてぎの1周約2.5kmの楕円型の規定コース「スーパースピードウェイ(※)」を、時間内に平均速度25km/h以上で7周走行するそうで、1/100gまで量れる電子天秤によってガソリンの消費量を計測し燃費を算出する。その様子をイメージしつつ試走する。
燃費良く走るために、走行パターンは、最初に一気に加速し、上限速度になったらエンジンを停止して惰性走行。スピードが落ちてきたら再びエンジンを始動し加速して、25km/hを保つ方法を取るため、運転技術も高度なものが求められる。また、より軽量化を図るために体重の少ない小柄な人がドライバーを務める場合が多く、女性ドライバーも少なくないという。
今回乗り込むのは、4年生の山本紘太さん。GPSレシーバーを積載し、念入りなチェックを経て、いよいよ走り出す。かなり低い姿勢で、まるで寝ながら運転するような体勢で、加速と惰性走行を繰り返し、周囲は静かに見守りつつ、GPSレシーバーで0.5秒ごとに記録を取って、どの場所で、どの速度で走るのが適切かを計算して行くそうだ。
最後までチームとしてひとつの大きなプロジェクトを実行しているという様子が伺える。
岡田先生曰く、今年の目標である1000km/リットルは、「あと何%か伸びれば超えることができる達成可能な目標」だそうだ。夏休みを返上し、全国大会に全力を注ぐ彼ら。真剣に試走を見つめる彼らが、1カ月後に明るい笑顔で運ぶであろう朗報に、ついつい期待してしまう。
※スーパースピードウェイ・・・陸上競技場やスケートリンクのような楕円型なので、オーバル(楕円)コースとも呼ばれる。普段はインディーカーなどが400km/hぐらいのスピードで走るコース。
| 学校名 | 独立行政法人 国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校 |
|---|---|
| 校長 | 大島 有史 |
| 設立 | 1963年(昭和38年) |
| 学部 | 機械工学科、電気電子工学科、電子制御工学科、電子情報工学科、環境都市工学科、生産環境システム専攻、電気情報システム専攻 |
| 住所 | 〒381-8550 長野県長野市徳間716 |
| TEL | 026-295-7003 |
| URL | http://www.nagano-nct.ac.jp |