ホーム > WAZACANインタビュー > スペシャル > 世界大会レポート :第8回国際アビリンピック2011ソウル大会
9月25日から6日間にわたり、大韓民国ソウル市で開催された「第8回国際アビリンピック」。「世界を目指す限りない挑戦」をテーマに、会場となったaTセンター(農業水産技術センター)には、前回の国際大会から27カ国も多い、57の国と地域から447人の選手が参加。関係者を含めると1517人の参加と、歴代最大規模の大会となりました。今回は、競技3日目に長野県代表として出場した英文DTP・米澤勉さんの競技の様子を中心にレポートをお届けします。
競技会場となった巨大な建物・aTセンターには、参加各国の国旗が飾られ、華やかな雰囲気。3日間で、関係者1500人を含む3500人が来場した 。
競技会場となったaTセンターがあるエリアは、ソウル市中心部の南に広がるビジネス街で、最寄りの地下鉄駅も目下建設中と、近年開発が進んでいるエリア。そのaTセンター1階にて、アビリンピック40種目の競技が3日間に渡って行われ、日本からは16種目31人の選手が出場しました。
パソコン系から製造系、制作系など、競技種目は実に多彩で眺めているだけでも楽しめる雰囲気でしたが、特に今大会のテスト種目であったe-スポーツは、日本ではまだ十分に浸透していない珍しさもあり、興味深いものでした。e-スポーツとはオンラインでサッカーゲームを行うもので、海外では広く「スポーツ」として認識されている競技。国際的にはいくつもの大会も開催されており、多くの観客が巨大スクリーンに映し出されたサッカーゲームに夢中になる様子からは、近年のe-スポーツ人気の高さを感じました。
※e-スポーツとは…Electronic Sportsの略称で、操作に高度な技能が必要となる対戦型オンラインゲームを用いたスポーツの新しい1ジャンルのこと。欧米や韓国では従来のプロスポーツと同様、スポンサー企業のついたハイレベルなプロゲーマーによる大きな大会が開催され、観客とメディアが一体となって楽しめるエンターテイメントになっている。
会場全体の雰囲気は、日本でのアビリンピック全国大会に比べ、さまざまな国柄の選手が集まるためか、緊張感が張りつめているというよりは明るく華やかなムード。多くの選手は、競技だけでなく世界大会の雰囲気そのものを楽しんでいる様子で、競技終了後にはお互いの健闘を称え合ったり、握手をする姿も見られました。
また、競技会場の2階展示場は、各国の伝統文化や韓国の伝統芸能・料理の展示体験コーナー、視覚障害者による按摩マッサージ、ネイルアート体験やデコレーションケーキの制作体験などさまざまなブースがあり、来場者を楽しませていました。メキシコの音楽演奏が行われたステージの前では、さまざまな国から参加した選手や関係者が踊り出すシーンも。車椅子の人や視覚障害を持つ人、さまざまな人種の人々も、全員が笑いながら踊る様子は、まさに国際アビリンピックを象徴しているようでした。
3日目の英文DTPに出場した米澤勉さん。真剣なまなざしで画面を見つめ、課題をこなしていた。
見学者は、初日に比べ2日目、3日目と日を増すごとに増え、最終日の3日目は土砂降りの悪天候にも関わらず、本当に多くの人々が来場。社会見学や修学旅行といった風の小中学生も大勢来場し、それぞれに興味深く競技を眺めたり、華やかな2階展示場での催しを楽しんでいました。
米澤さんが挑む英文DTP競技も、最終日のこの日に開催。朝10時に競技開始とあって、米澤さんは9時過ぎには会場に入り、入念にパソコンの動作確認などをしていました。競技は時間通り10時ちょうどにスタートし、米澤さんも落ち着いた様子でテキパキと作業を開始。日本から応援に駆けつけた米澤さんの奥様をはじめ、関係者は一様にその姿を見つめていました。
米澤さんの画面を覗き込むと、鮮やかなピンク色を使った作品を作っている様子。以前のインタビューで「自分が作りたい、インパクトがあるものを作れるようになってきた」と話し、また「英文でのレイアウトは、日本語と違って基本横書きなので、ラインを意識したり、ブロックで区切ったりと遊びを入れていければと考えている」と話していた米澤さんの姿が思い出され、今大会も米澤さんらしさが出るようなインパクトと遊び心があふれた作品を作っているのではないかと頼もしさを感じました。
当初の予定では、1時間30分の昼休憩を挟んで15時30分に終了予定だった競技でしたが、スケジュールの変更があり、休憩を挟まず14時に終了。残念ながら、審査員以外は完成作品を見ることができませんでしたが、終了直後に米澤さんに話を聞くと「結果はどうあれ、できる限りのことはやりました。今まで応援していただいた皆さんに感謝します」と、全力を尽くした様子。疲労感は感じられるものの、その落ち着いた口調は、明朝の結果発表に期待が持てそうでした。
3日目は、英文DTPを始め、全7種目13人の日本人出場者がいるとあって、多くの日本人関係者やメディアが会場を埋め尽くしていました。競技終了時間には、至るところで選手の健闘を讃え、拍手が送られる姿が見られました。
競技翌日の朝9時に行われた結果発表で、見事銅賞の受賞が決まった米澤さん。競技終了後は全く手応えがなく、自信がなかったなかでの受賞に本当に驚き、嬉しそうな様子が印象的だった 。
競技最終日の翌日には、すっかり静かになったaTセンターで、朝9時から結果発表が行われ、入り口には大勢の人だかりができていました。そのなかには、もちろん、テレビモニターを見つめる米澤さんの姿もありました。
順次、結果が発表されるなかで、ひと際「ワーッ」と、日本人関係者の歓声が上がる場面がありました。データベース(基礎)の発表で、なんと、木戸さんが金賞、関野さんが銀賞と、日本人選手ふたりが上位を独占したのです。日本人選手団に一気に明るいムードが広がるなかで、米澤さんも見事に銅賞を受賞! 驚きの表情とともに、満面の笑みを浮かべた米澤さんに早速お話を聞くと、「実は、課題が終了時間ギリギリに終わり、焦っていたこともあって、提出の段階で少しミスをしてしまったんです。だから、昨夜はかなり落ち込んでいて、まさか受賞できるとは夢にも思っていなくて…」という意外な返答が。前日の競技終了直後は「落ち着いている」と感じられたのに、本当は落ち込んでいたのだそうです。落ち込んだ様子を周囲に感じさせないのも、普段から穏やかでやさしい口調の米澤さんだからこそなのでしょうか。ともあれ、受賞して心から明るく晴れやかな笑顔を浮かべる米澤さんの姿が非常に感慨深く、ソウルまで応援に来て本当に良かった、とこちらまで心から嬉しくなるのを感じました。米澤さんに続き、その後も続々と日本人の受賞が相次ぎ、お互いに誉め讃え合う選手や関係者で大いに盛り上がりました。
1988年に開催されたソウルオリンピックの会場となった広大な敷地のオリンピック公園内にあるオリンピックホールで、開会式・閉会式が行われた。
米澤さんの結果発表が行われた日の16時からは、広大なオリンピック公園の敷地内にあるオリンピックホールで盛大な閉会式が行われました。表彰式では、入賞した日本人選手18人のうち、銅賞までの入賞を果たした13人が表彰台に登場。大勢の日本の関係者が客席から拍手を送り、日の丸の旗を振って選手を讃えていました。各国の応援団は、それぞれに歓声を上げたり口笛を鳴らして出場選手を讃え、その盛り上がりはいかにも選手の「お国柄」を反映しているようで、国際色豊かな空気を感じました。
全40種目、160人に対する表彰を終え、イ・チェピル雇用労働部長官は「今大会を通して今一度障害者の挑戦と情熱、感動と喜びを経験した」と話し、「今日のこの場がすべての参加者のチャンスと希望のきっかけになることを願う」と述べていました。
閉会式後に開かれた歓送宴では「一つになった世界、一つになった私たち」というテーマでの歓送宴も行われ、朝鮮の伝統楽器であるケンガリ・チン・チャング・プクを用いた韓国の現代音楽「サムルノリ」の公演やレーザーショー、アイドルグループ「MBLAQ(エムブラック)」の祝賀公演、DJパーティなどを開催。選手たちは舞台上で奏でられる演奏に合わせて踊るなど、ステージと観客が一体となって楽しむ光景が見られ、国際アビリンピックの最終イベントとしての盛り上がりを見せていました。
国際アビリンピックは、障害者の職業的自立の意識を喚起するとともに、事業主や社会一般の理解と認識を深め、さらに国際親善を図ることを目的として開催されている大会。今回、観客のひとりとしてこのソウル大会に参加することで、その意義を深く実感し、またこの日のためにプライドを持って頑張って来た選手と家族の絆を強く感じることができました。そして、まさに世界のなかで戦っている一人ひとりの選手の奮闘を目の当たりにすることで、こちらも勇気やパワーをもらうことができ、4年後の2015年に開催される次回第9回フィンランド・ヘルシンキ大会(予定)での日本人の活躍がますます期待されるのを感じた取材となりました。