ものづくり人材応援キャンペーン WAZACAN 長野技能五輪・アピリンピック公式マガジン

WAZACANインタビュー

ホーム > WAZACANインタビュー > 匠に聞く > 有賀恵一

匠に聞く

有賀建具店
有賀恵一

木に惚れ込んだ職人の挑戦の日々

美しさと力強さを併せ持つ木に魅了され、建具・家具職人として生きてきた有賀恵一さん。自ら営む建具店での製作活動と後進の育成を行いながら、素晴らしい木材を発掘し活用しようと誕生した「森世紀工房」の一員としても精力的に走り回っている。

有賀さんが惚れ込んだ木の魅力、さらに職人として挑戦を重ねる有賀さんの信念を尋ねようと、伊那市にある建具店を訪れた。


一人格として認められた高校時代

それぞれの木の性格(性質)は、こうして手で触れて感じ取る。理屈や理論ではなく、体が木を学び覚えてゆく

幼少の頃から、先代である父の仕事を手伝いながら日常的に木に触れる毎日を送ってきた少年は、森に出掛けて遊ぶのも大好きだったという。そんな自然好きの少年に転機が訪れたのは高校進学時。知り合いの紹介と父の勧めで選んだ全寮制の私立高校は、それまでの人生観を激変させる出会いに満ちていた。
「自分で考えて自分で決める。一個人として認めてもらい、対等に扱ってもらえたんです。その分、自身の言動に責任を持たねばならないという厳しさもありました」

“子供”としてしか扱われたことのなかった有賀さんにとって、衝撃と刺激の多い日々であったことは言うまでもない。さらに、他人との共同生活ももちろん初めてのこと。「人と出会って、関係を築く方法を学びました」と当時を振り返る。

創立者が掲げたモットーは「be gentleman」だった。ある種漠然としたこの課題こそが生徒たちに考えることを促し、自分なりの理想と結論を導き出させ、結果彼らを大きく成長させる。この3年間が有賀さんの人生そのものの土台となっているのだ。


はみ出すことを恐れてはいけない(はみ出すことは楽しい!)

モットーは「はみ出すことを恐れず、人との関わりを大切にすること」
(下)その心意気は有賀さんの元で育つ職人の卵たちにしっかり伝わっているようだ

高校卒業後すぐに家業を継ぐため父の元で職人修業を始めたものの、上から物を言われる生活への逆戻りがかなりの苦痛だったという有賀さん。時に父とぶつかりながら技術と知識を少しずつ増やしていった。
しかし、有賀さんは人と同じでは満足できない性分。それは高校在学時に学園の創立者が説いていた「人もモノも、その良さは決して同じではない」という教えに影響を受けたもので、「当時の新建材を使った個性のない家具に納得できなかった」という。

そんな疑問の数々を、誰も挑戦していないことに取り組むことで解消しようと決意した有賀さん。それは世の流れに沿ってきた回りの人達には反抗心のように見えたかもしれない。しかし、その根底にあったのは木を愛する純粋な気持ちと、自身で考えて行動するという考えだった。
「はみ出したって自分で責任を取れるのであればOK。挑戦なくして新しいものなんて生み出せないからね」と、いたずら顔で笑った。


生き物である木の可能性は無限大

全国から集められた木材は、風雨にさらしてこそその本質と真の魅力を表す
(下)どう使うべきか? という難問の答えは、材が職人に教えてくれる

有賀さんが取り組んでいるのは、一般的には使いものにならないと見捨てられてしまう木材の良さを発見し、それを活かした製作活動だ。特に国産材を積極的に使うことで、木が持つさまざまな魅力を見出し、身近な森の可能性を見直してもらえるような製品を生み出そうと奮闘中だ。
「建具は動かすものだから狂っては困るため木の最もいいところを使う。でも家具は建具に比べて最上級のところを使わなくても許されるし、それが個性や味になることもある。もちろん大きく狂っては使い物にならないけど、立体(三次元)世界だからこそ平面(二次元)よりも広がりを持たせられる」

現在、全国から多種多様な木材を買い取り(または引き取り)、3〜5年自然乾燥させた後に木の特徴を判断して適所に用いている。
高く積み上げられた2万枚にもおよぶお宝たちは、今か今かと出番を待っているかのように見える。それらを眺める有賀さんの眼差しには、木への真っ直ぐで穏やかな愛情と材を見極める職人特有の厳しさが混在していた。


建具職人・家具職人とは?

建具とは戸や障子など、空間を仕切る役割を果たす建物の開口部の開閉を担うもので、障子や襖などがその代表例。職人は、建具に用いる最良の材を選び寸分の狂いなく作り上げねばならない。木の特性を見極め、それを正確に用いる技術が要求される。

一方、家具職人とは日常生活で使われる立体製作物を手掛ける職人。建具職人同様に木の特性を見極める能力はもちろん、材の段階から頭の中で三次元の完成形をイメージする想像力とそれを実現させる創造力が求められる。お客様の要望を満たしつつ自身のセンスも発揮し、なおかつ経年変化を予想してそれらを楽しむバランス感覚も重要。

いずれも木を「見る」力と、肉体労働のため体力を備えることが基本。


社名 有賀建具店
代表取締役 有賀 恵一
設立 1946年
事業内容 建具・家具製作、販売
従業員 5名
住所 〒399-4501 長野県伊那市西箕輪吹上1324-1
TEL 0265-73-2870
FAX 0265-73-6024
URL arugatateguten@inacatv.ne.jp