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自分×世界

長野市松代町
不二越機械工業株式会社

切る・磨くを極めて、世界のシリコンウェーハのトップシェア

携帯電話やパソコンが今の生活からなくなることを想像できるだろうか?

長野市松代町にある不二越機械工業では昭和39年から、パソコンなどに不可欠な半導体の加工装置の開発を進め、今では世界のシリコンウェーハの約30%が同社の製品で研磨されている。つまり、私たちの生活の何割かはこの企業の製品に支えられているとも考えられる。

現代に欠くことができない電子機器に組み込まれているICチップ。この基盤となるシリコンウェーハは、超微細な回路を書き込むために高い精度の平面が求められる。では、なぜ信州松代の地で、この企業は生まれたのだろうか?


自社製品製品開発への熱い想いと、新しい出会い

今も当時をふりかえって静かに熱く語ってくださった市川社長

航空機の低圧燃料用噴射ポンプを製造していた不二越精機工業が、昭和19年に松代に戦時疎開したところからこの物語は始まる。

昭和27年に先代社長が同社から営業設備を引き継ぎ、不二越機械工業を設立。当時は高速度旋盤や木工機などの工作機械の製造販売が主な業種だった。

基本的には受注生産の事業であった工作機械の製造販売には、コスト面・営業面でのロスも大きかった。

「自社製品をなんとしても作り出したい」

市川社長はその情熱をあきらめなかった。
自社製品製品開発への熱い想いが、新しい出会いを呼び込んだ。 先代社長の友人がこんな話を持ちかけてきたのだ。
「これからの時代に必ず必要となる機械のアイデアがあるが、大きな企業ではどこでも本気で作ろうとしない。やってみないか?」と。

試作をしたのが半導体シリコンのインゴッドの特殊切断機であった。インゴッドとは円柱状の半導体のことである。当時は、エンピツほどの断面積だった。
どこの企業も実現しなかった技術を確立。ついに昭和39年、半導体シリコンの特殊加工機械「ラッピングマシン」の試作に成功した。


東京ドームのグラウンド全体を0.1ミリの誤差もなく平らにする

上/「ラッピングマシン」によって切り出されたシリコンウェーハ。下/シリコンウェーハをポリッシングマシンで精密に研磨する

「産業のコメ」と呼ばれるほど非常に重要な分野である半導体。
そんな半導体のベースとなるシリコンウェーハには「限りないフラットネス」が求められる。
なぜか?
微細な素子や配線などの像を光学写真技術によって半導体基板の上に写し込み、集積回路を形成していくのだが、その際にベースとなるシリコンウェーハに0.00003mm以上の誤差があってはならないのだ。

0.00003mmという単位を可視的な世界に置き換えると、東京ドームのグラウンド全体を0.1ミリの誤差もなく平らにすることができる精度なのだ。

ナノレベルでの精度を実現できる研磨技術。
それはつまり、半導体産業の幕開けを担う重要なマシンでもあった。
なんとしても自社製品を作り出したい―、市川社長の熱い思いが、日本の半導体産業のフロンティアを開拓する重要なマシンを生み出したのだ。


「切る」ことから「磨く」ことへの探求

ウェーハ直径300ミリのポリッシングマシンにおいて、2007年「元気なモノ作り中小企業300社」の表彰を受けた

シリコンウェーハの加工装置「ラッピングマシン」の開発に成功した不二越機械工業。次に目指したのは切り出されたシリコンウェーハの表面を高精度かつ高能率に磨く機械の開発だった。

「切る」ことから「磨く」ことへの探求―。

温度管理はもちろん、研磨布の相性や磨くプレートの材質や形状、研磨剤の濃度や種類、ナノレベルを計りとる測定機器、制御システムなど、「磨く」ということについて極限までつきつめる研究の結果、とうとう「ポリッシングマシン」の開発に成功する。

2007年には、ウェーハ直径300ミリのポリッシングマシンにおいて「元気なモノ作り中小企業300社」の表彰を経済産業省中小企業庁から受けた。
当時、200ミリ直径が主流だった市場のニーズの先を目指し、さらに効率的な300ミリのポリッシングマシンを他社に先がけて開発した姿勢が認められたのだ。
実は、企業姿勢こそが不二越機械工業の本質だといっていい。
「リンゴ畑にバナナを植えるな」
「世界一のリンゴを作ろう」
有名な市川社長の口癖である。
本筋から外れた分野に手を出すのではなく、目の前の技術や環境を生かした製品を開発する。技術の本道を極めることで付加価値がついた製品開発を行うことができる、という思想である。

不二越機械工業の技術者は現場に何度も足を運ぶ。
「お客様の中枢部で具体的な要望を聞けることこそ、私たちにとって非常に大きなメリットです。そこには必ずニーズがあり、開発にフィードバックされるべきものがあるからです」と市川社長は言う。


松代から世界へ発信される未来の技術

信州大学や他社と「善光寺バレーセンサ研究会」を設立し、新しいセンサの開発と事業化を目指すほか、「産学協同」をコンセプトに金沢工業大学などと研究を進めるなど、どんな時代においても市場のニーズをキャッチし、今ある技術をさらにより深める。この企業姿勢こそが、不二越機械工業を世界のマーケットに押し上げた原動力であろう。

「切ること」「磨くこと」に特化し、ナノレベルの世界をさらに深く極める。これから私たちが出会うであろう近い未来の製品のいくつかは、そんな不二越機械工業の技術によって松代から世界へ生み出されていくのだ。


社名 不二越機械工業株式会社
代表 市川浩一郎
設立 1952年
事業内容 半導体加工装置の開発・製造
従業員 219名
資本金 6000万円
住所 〒381-1233 長野市松代町清野1650
TEL 026-261-2000
URL http://www.fmc-fujikoshi.co.jp/