ホーム > WAZACANインタビュー > 自分×世界 > 斎藤竜太
上田市の田園風景に、突如として現れるHIOKIフォレストヒルズ。
ここが世界中で使われる「計測器」の開発・生産・販売の全部門が集まるHIOKIの中枢だ。全社員のうち約1/3が研究開発員で、海外売上高比率は35%に上る。常に世界に向けて未来を創造し続ける研究開発型企業である。
ハイブリットカーのモータ開発、ブルーレイディスクのレンズ検査、住宅の配線検査など、製品の開発段階から出荷におけるまでのすべての検査で、目に見えない「電気」を、数値としてみえるようにするのが計測器の役目だ。小さな製品から車、ビルに至るまで、すべての製品は、性能検査を受け安全で確かな製品として私たちのもとに届いている。この検査できちんした値を割り出すことができなければ、安全性も性能も約束されない。
計測器とは、すべての製品開発に不可欠なものづくりの基礎たるものなのだ。
Vol.1は、現場測定器(※)の一つ、絶縁抵抗計の製品開発を担当する斎藤さん。
頭の中のアイデアをひとつの製品に仕上げるまでの工程は、どんな難しさや楽しさがあるんだろうか?
※現場測定器・・・主に電気配線工事、設備の保守点検で使用される測定器群。絶縁抵抗計は、電気工事の点検に使われる。住宅建築で分電盤からコンセントまでを配線する時に、漏電など配線の絶縁劣化を測定する機器。
実験装置をつくったのが、研究開発の道への転機だった
父が航空機の設計士で、コンパスや定規が遊び道具。「設計」が当たり前のように日常にある少年時代を過ごした。
大学院では情報工学を学びプログラマーを目指す日々。そんなある日転機が訪れる。実験装置を作るのが楽しくてとても心に残ったのだそうだ。そうして日置電機で働いていた先輩の勧めも後押しし、電気回路を作るものづくりの道へ進むことになる。
ただ、ソフトウェアにしろ電気回路にしろ、この仕事でなければというこだわりはなかったそうだ。
「どんな仕事をしていても、100%満足するということはないと思う。であれば、与えられた仕事をしながら仕事を覚えて、自分に向いたものを見つけられればいいかなと」
自分が何をしたいかではなくて、そこで何ができるか。
開発畑で12年。「改めて斎藤さんにとって製品開発とはどんな仕事なのですか?」と訊いた。
「自分のこだわりを実現できる仕事です。世の中に売っているものに満足できない人には向いている仕事です」 それは、満足できないことがあるなら、自分で下地を積み上げて答えを導き出したいという斎藤さんにぴったりの仕事だったに違いない。
お客さんの要望である、暗い場所での作業のしやすさを実現した製品
「こういう測定器が欲しい」その声から開発がスタート。
試作品を作り、顧客に手渡した時の第一声は、「何これ?大きすぎる」「見た目が安っぽい」などなど。
要望をすべて詰め込んだはずのそれは、最初の段階では何一つ誉められないのだそうだ。
そうやって何度も試作を繰り返し、顧客の満足いく形に仕上げていく試行錯誤の作業が続くのが製品開発の現場だ。
機能や性能だけでなくデザイン性も求められる現場計測器。その上限られた形の中に必要な性能を詰めこみ、今まで以上に使いやすいものを目指さねばならないから難しい。
時には精神的にも肉体的にも追い込まれ、アイデアを形に仕上げていく生みの苦しみがあるのだそうだ。
「20代の頃は睡眠時間を削ってだいぶ無理をしました」
そんな日々を乗り越え、今は原因特定に時間がかからなくなってきた。とはいえ「今でも自信はこれっぽっちもない」と言う。
けれども、自ら開発した新製品は、HIOKIの中で販売台数がトップ10入り。建築の現場では欠かすことができないものだ。その製品を手に持ち説明してくれる表情からは、自信と満足感が溢れていた。
お休みは実家の畑で家庭菜園をしているそうで、ホウレンソウから始まり、どんどん規模が拡大中だとか。
「野菜がちょっと虫に食われるほうが次にどんな手を打とうかと考えられて面白い」とか「まずは本を5~6冊買って研究。連作障害が起きないようにするにはとか考えています」と、ついつい開発者魂が顔を覗かせてしまう。
そんな斎藤さんの思い描く5年後について訊いた。
「世の中の変化にいかに対応して、必要なものを必要な時に提供できる会社にしていきたい。
うちの製品がメインになることはないけれど、いかに顧客が望むものをスピーディに提供できるか。そうしてどんどん新しい製品を世の中に導入していけるようになっていきたい」と語ってくれた。
印象的だったのは、「まだまだです。100%満足いくものには届かない」という言葉が要所要所にでてきたこと。今あるものに満足していては、決して良いアイデアも新製品も生み出すことはできないだろう。どんな壁をも乗り越えて、常に新しいことに挑戦し続けていく。なんともこの人は、根っからの開発人なのだ。
顧客から製品に対する要望、問題点や不満を訊き出し、何回も試作を繰り返しながら、顧客とともに彼らの望む製品を作り上げていく。
限られた時間と形の中に必要な性能をすべて詰め込まなければならないという意味では、
アイデアを形に仕上げていく苦しみもあるが、自分の企画・設計したものが形になり、製品化されるという醍醐味がある仕事。
ちなみに今回の計測器は、顧客調査を繰り返してこだわりの企画を立てたので、調査をはじめてから販売に至るまで2年もの月日を要したのだそうだ。
| 社名 | 日置電機株式会社 |
|---|---|
| 代表取締役社長 | 吉池 達悦 |
| 創業 | 1935年(昭和10年) |
| 設立 | 1952年(昭和27年)1月 |
| 事業内容 | 電気計測器の開発、生産、販売・サービス |
| 従業員 | 651名(平成21年現在、HIOKIグループ全体) |
| 資本金 | 32億9946万円 |
| 住所 | 〒386-1106 長野県上田市小泉81 |
| 連結子会社 | 日置フォレストプラザ(株)、HIOKI USA CORPORATION 日置エンジニアリングサービス(株)、ハインズテック(株) 日置(上海)商貿有限公司 HIOKI INDIA PRIVATE LIMITED |
| TEL | 0268-28-0555 |
| FAX | 0268-28-0559 |
| URL | http://www.hioki.co.jp/ |